オーストリア

「秘密警察」という言葉を耳にされたことのある方は多いでしょう。
ドイツのゲシュタポやロシアの秘密警察がスパイのような働きをしたり、国家保安委員会としての働きは歴史の中でも著しいものです。

中には目を覆いたくなるような残虐なエピソードがあることもしばしばで、その結果「恐ろしい組織」といった印象を人々の中に植え付けているのかもしれません。
しかし、オーストリアの秘密警察、とくにヨーロッパの新秩序に基づく政治体制として行われたウィーン会議時代のものはちょっと…、いや、かなり風味が違います。

一体、何がそんなに違うのでしょうか?
当時の警察大臣、ハーガー伯爵は、国内における些細な情報も逃さず仕入れることにより、謀反や陰謀といった国をあざむく計画を阻止できると考え、秘密警察官たちに、「どんなに内容が細かくなっても構わないから情報を集めて来い」と命令を下したのがことの起こりのようです。

ゴシップばかりだった?

命令が下されたそれら警察官達は、実に従順かつ手際の良い仕事を行いました。
いかなる場所にも向かい、チラリと耳にした情報も聞き流すことなくキャッチします。
その結果、ハーガー伯爵のもとに届けられた報告は、「ロシア皇帝がアウアースペルク公爵未亡人に行っていることはストーカー行為だ」とか「プロセイン王がお忍びでお出かけになったが、あのスタイルはあまりにも妙だ」などといったワイドショーのゴシップのようなものばかりだったそうです。

たしかに秘密警察は任務を忠実に果たしたわけですし、それらの報告はもれなく皇帝にも伝えられたそうですが、それで歴史の何が変わるとも思えませんし、そもそも皇帝がそれらのレポート全てに目を通していたほどヒマを持て余していたのだと考えると、なんだか情けない気持ちにもなってしまいます。

警察官は手紙を読むことができた

加えて、当時のオーストリア警察官の権限の中には、手紙の中身を読むことができる、というものもありました。すでに読み捨てられゴミ箱に入れられたもの以外に、郵便ポストに投函された未開封のものまで閲覧できたのだとか。
読まれる側はたまったものじゃありません。
それらを阻止するべく新たな法律が制定されたものの、残念ながら秘密裏に開封できる技術もどんどん進歩しておりましたので、警察官達は、法律などものともせずに国民の手紙からありとあらゆる情報を入手することができたようです。

そしてやはり、面白くゴシップ性の高い内容は警察大臣に報告されます。
もはや謀反やデモ、クーデターなどのなどの怪しく危険な情報よりも、ウワサ話のほうに注意が集中しているかのようにさえ見えてきてしまいます。
まあそれだけ、いつの時代も人々の好奇心をかきたてるのものはゴシップなのだ、ということなのかもしれませんが…。

ゴシップばかりではなく、偉業も称えられていた

最後に付け加えておくならば、彼らは国を守るための働きもしっかりとこなしていたようです。
それによって防ぐことのできた事件は数多く資料として残っていますし、彼らの偉業も称えられています。
やるべきことを行った上でこれだけの噂話を集めていたのですから、ある意味有能であるといえば、そうも言えます。

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